神理正法について（7）

（前号より）

 

人間の精神的な面においても又しかりです。このような中道の道というものを考えてみてください。

私たちの肉体を支配しているところの、意識の中心である永遠に変わらない心というものは、まず、正道という中道の道である八正道を実践し、己に心というものがあれば、他人にも存在していることを認めるようになります。そこに私たちには謙虚という心が生まれてきます。ですから、相手に対しても自分だけを主張しません。常に相手の心になって、自分を正しく見るようになっていきます。こうなりますと自信というものを持つようになっていきます。

この自信を持つには、まず私たちは自分自身に対する努力する行為、このものが必要となってきます。仕事なら仕事に対し、家庭なら家庭に対し、それぞれの分野に対し努力するようになってきます。努力をするには、その中から私たちの心の内面におけるところの智慧というもの、そして自分自身が生活環境の中において勇気を持つということが必要になってきます。

勇気、努力と智慧というものが自信をつくり出していきます。その時に初めて人間は、智性も感情も理性も本能も調和された丸い心になっていきます。この状態になりますと、曇りがありませんから調和された神の光によって心は満たされていきます。この時に、当然私たちは自分自身に対する色々な執着というものもなくなっていきます。執着心、こういうものから解脱し、そこに苦しみ苦悩というものもなくなります。

苦悩というものは自らがつくり出しているのです。なぜ人間は苦悩しているのか、その原因を追求して、我々は二度と同じ過ちを繰り返さないように、人間は進歩していかなければならないにもかかわらず、勇気というものが自分にないために、自分の欠点もなかなか修正することができません。

我々は、生活環境を通して色々とこのように中道という道を、ややもすれば忘れがちなのです。この中道を外れて極端に行きますと自分自身というものは絶対偉いんだという増長慢に変わっていきます。この増長慢に変わってしまうと、他人の意見等は聞かず、自己保身というものが強くなっていきます。世の中は自分を中心に回っているような錯覚を起こします。こういうような考え方はいけないのです。自己保存という心の状態は不調和を呼びます。しかもまた、この中には相手に対して怒る心も強くなります。謗る心も強くなってきます。自分自身の立場というものを考えて、少しくらい他人より能力があれば、つい世の中へ出て人を見下したり、自分というものだけを表面に出そうとします。こういう考え方はいけません。

やはり謙虚な心を持ち、実るほど頭の下がる稲穂かな。自然というものはこのように、実れば実るほど稲はだんだん頭を下げていきます。しかし、権力の座に一旦座ってしまうと、一般の人々を人間扱いしないような行動をします。そういう人は本当に立派な人と言えるでしょうか。自分を売り出すためには手段を選ばない。マスコミにしても、こういうようにして自分の立場だけを守ろうとします。

中道ということを忘れ去って、片寄った思想的判断をし、自分の都合の悪いことは言わず、相手の欠点ばかりをさらけ出そうとしている政治家たち、醜い姿です。政治は相手の欠点だけを出すためのものではないのです。いかにして国民に平和で良い環境をつくり出すかということが重要であり、相手の欠点を突っつくような真似をするのが政治ではないのです。我々はそういうことを考えた時に、政治というものも正しく中道の道でなければならない。彼等は自分の立場だけを擁護しようとする集まりなのです。

また一方において、反対側の極端を見ますと、私たちの心の中には色々と変化があります。この極端の方は、自分自身の自己損失です。自己というものに対する自信を失った人たち。多分、自分はダメなんだと思い、ついに自分自身の命までも断ってしまう人もあります。しかも自閉症という姿になって、人の前に出るのも、相手と話すことも嫌になってしまう。これもやはり自己保身の強い人たちです。自己保存の強い人たち、そういう人たちだから人の言うことを聞くかと思ったら、あにはからんや、自己停滞になってしまうと自分の小さい心の中の小さな住人になってしまいます。これは小説家に多いです。

小説家は、一つのテーマを通して小説の小さな枠の中で自分が陶酔していきます。その中では心で想像し、自分自身の感情の状態と、文学を通して相手を殺したり恨んだりする想念をつくり出します。そういうストーリーの中において自分の枠を、その中に心の枠をつくってしまいます。

（次号に続く）

この稿は、昭和47年6月11日、関西本部定例講演会での内容をテープより書き起こしたものです。　　　　　〈文責＝編集部〉