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高橋信次先生講演
Lecture

心の豊かさ(2)

(前号より)

 

しかし、この自然をも含んで宇宙は自分自身でもあるのです。仏教の言葉の中に〝宇宙即我〟という言葉があります。私たちが自分の心と行いを神理に照らし合せ、中道の道を根本とした調和ある生活をしていますと、私たちの心の中からは偽我が消え去り、本来、持ち合せているところの善なる心のみになるのです。そのようにして人間が肉体を持ちながら自らの心の調和を計るならば煩悩即菩提となって私たちの心は無限大に広がり、宇宙大にまでなっていきます。

 

心の曇りを取り除き、心が調和されたときに私たちの心は拡大され、自らが大宇宙を呑み込むだけの偉大な知慧の所有者であることを自覚するのです。そのとき、自分自身というものが、この肉体と意識(魂)によって成り立っていることをはっきり知るでしょう。両親からいただいたこの地上界の原子細胞によって構成される肉体舟(目に見える私たちの肉体)と魂は一体となっているのです。

 

物質とエネルギーとの関係は物理学上においても実証されております。物質とは宇宙空間に体積と質量を有するものをいいます。この物質の質量と29万9774キロパーセコンドという、一秒間に地球の回りを七回転半する光の速度を二乗したものとの積は仕事をなしうる能力であり、これをエネルギーといっています。物質は目で確認できてもエネルギーは目で見ることはできません。
私たちの住んでいるこの三次元の世界に対して、三次元を包む四次元以降の世界が存在しているという事実は、私たちが日常生活の中でテレビジョンや映画館のスクリーンに写し出されている映像を思い出せばよくわかります。映像は二次元の世界です。二次元の世界に写し出されているものは三次元の世界の投影なのです。そのスクリーンにどんなにかわいそうな場面が写っていたとしても、私たちはそれに加勢することはできません。

 

次元の異なった世界の関連もこれと同じようにいえる筈です。ということになれば三次元を投影している四次元以降の世界というものの存在を誰が否定できるでしょうか。この四次元以降の世界のことを意識界といっております。私たちは死んでしまえばすべては終りだと錯覚しているだけなのです。
私たちは仏教の〝色即是空、空即是色〟という言葉を知っています。天台智顗という中国のお坊さんはこれを色心不二ともいっております。色心不二というのは、心の世界と私たちの肉体は一体であり、別ではない。つまり、この二つのものが常に調和して私たちの今があるのだという意味です。天台智顗は、この三次元の世界そのものが宇宙体であり、神の体である。その神の体の現れであるこの肉体は神の愛の表現でもあると言っています。

 

人間はみな神の子です。そして神と同体なのです。しかもその中で個々の生命としての特徴を持ち、個性を有しております。現に私たちは地球というこの環境に適応した肉体を持って今、生きているのです。
私たちの現在の生活環境はたとえ経済的に豊かなものであろうとも、あるいはまた地位の高い生活をしておろうとも、逆に経済的に非常に厳しい環境に生活しておろうとも、たとえそれがどのような環境であれ、それは肉体の支配者である私たちの心、魂を豊かにするための学習の場なのです。そこでの体験を通してより豊かな自分自身をつくっていくことが大事なのです。
何故、私たちは物質経済に翻弄されてしまうのでしょうか。私たちがこの地上界に出てきたとき、お金を持ってきた人がいたでしょうか。曼陀羅や偶像を持ってきた人がいたでしょうか。持ってきた人は誰もおりません。私たちは裸で生れてきたのです。そしてまたどんなに経済力のある人も地位のある人も、そしてまたいろいろな偶像を祀っている人たちも死ぬときにそれを持って帰れる人はいないのです。

 

死という出来事に直面している気持ちで、今思っていることや抱えている問題を真剣に考えてみて下さい。大きな問題にぶつかったときに自分の心がどうであるのか、一度想像してみる必要があるのではないでしょうか。人間の死というものはいつ襲ってくるかわかりません。人間は毎日毎日を一日一生の心構えで暮すことが必要なのです。そして明日があるなら、今日よりまた豊かな自分自身をつくろうとする生活行為が大事なのです。八正道という心のものさしを持ってこのような生活をしている人たちこそ本当に信心深い人たちなのです。
私たちはこうして普遍的で偉大な神の子としての自覚を得ていくのです。それは自力でなしていくことです。当然、それによって心が満たされ、感情も智性も理性も本能もすべてが円満調和されていき、執着がなくなります。執着がなくなれば物質も経済もあらゆる面において調和されたユートピアが完成されていくのです。それが、肝心かなめの人間の心の本質がわからないために欲望だけが正面に出るのです。これが闘争と破壊を生み、あらゆる不調和の根底となっているのです。
現代に生きる人間にとって、神の子としての自覚をなし、豊かな丸い心を自らつくる以外に本当の調和はあり得ないのです。それは神がなすのではなく、私たち一人一人が五官を通して自分を完成する以外に地球上に仏国土を完成させることはできないのです。

 

(終わり)

 

(昭和49年1月13日、大阪での講演の要旨をまとめたものです。)

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