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時の言葉
Word at time

2020年05月 節度を持て

戦後、日本の経済は鉄鋼、造船、自動車、電化製品などを中心に異常な発展を遂げてきた。その成長率は、たしかに世界の瞠目に値する。しかし、天井知らずの高度成長は日本の国土をいびつにする勢いであり、産業優先の経済政策は、人間を海に追い落とす役目を果たしているかのような錯覚すら感じられた。政府も産業人も時の流れを忘れ、高度成長に酔っていたかのようである。ニクソン声明は青天の霹靂だったからだ。予測されていたとはいえ、株式市場はその驚きを映して戦後最大の暴落を演じている。ドル・ショックの名にふさわしい仰天ぶりであった。

 

アメリカの不況の第一は、ベトナム戦争による膨大な消費に原因があり、日本の好況はその間隙をぬった利益追求の経済競争にあった。当然、その反作用はいつの日にか訪れてくるものであった。ニクソンはまず中共に手をのばし、戦争終結の希望を託し、次いで、大国のメンツをかなぐり捨てる先般の声明となった。声明が出た途端に我が国の高度成長にブレーキがかかった。何れこうなるであろうことはわかっていたところであるが、しかし誰かが荒治療をしなければアメリカも日本も、それこそ本当の大恐慌の洗礼を受けなければならなかったであろう。

 

何でもそうであるが、出る杭は打たれるのである。出過ぎても引っ込んでも反作用はついてまわる。日本の経済はこれまで凄まじいと言っていいほどの伸びであった。明治以後こんな経験は初めてであったであろう。しかしそうした成長のかけ声の陰では、工業公害は都市ばかりでなく、農村や山間部、そして海にまではびこり、自然破壊という人間生活の安否にまで発展してきたのである。国内の風俗習慣にしても、糸の切れた凧のように、あてのない空間を舞っている。

 

いったいその原因は何であろう。いうまでもなくそれは人間の自我心である。執念にも等しい自己保存と競争意識が、個人にも集団にも作用しているからにほかならない。大学の殺人的入試一つ取り上げてもその事実がはっきりと表れている。今日の高度経済成長の骨格は、こうした自己保存という自我に基づいた無秩序無節操な経済競争にその原因がみられるようである。

 

個人でも集団でも、節度、協調、勇気、平等、感謝報恩、そして慈悲、愛という心を失うと、家庭も社会も瓦解する。なぜなら、自然はそうした法則の下に運行しており、人間だけがこの例外ではないからである。人間の社会がより円滑に、健やかに、豊かに、永続的に発展させるためには、節度、協調といった中道の心を尺度とした、扶け合う環境を作ることがまず必要であろう。今度の通貨問題は、こうした教訓をはっきりと示したいい例ではないかと思う。

(一九七一年十月掲載分)

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